怒っているのは客か出演者かどっちだ問題

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NHK「スタジオパークからこんにちは」の生放送中に、 見学に来ていた主婦の赤ちゃんが泣き出した。 即座に司会者は、 「あら~、赤ちゃんが泣いてしまったね~」とやさしい言葉をなげかける。 この場合、赤ちゃんは泣くもの、みなさん暖かく見守りましょう。 という雰囲気になる。 親にしてみれば、せっかくの番組見学。 子供が泣いたって、そのうち泣きやんでくれるでしょ、と思う。 たぶん、泣き出した子の母親はその場であやしつづけるだろうと思う。 その場を離れずに・・・ ここで、ふと思い出したことがある。 数年前、劇場でみた落語である。 落語の途中、赤ちゃんが泣き出したのである。 そこで落語家は、落語をとめ、赤ちゃんが泣いたことをとがめず、 「あー、ごめんねー、もうちょっとで終わるからねー」 と、観客に対して笑いで流した。 で、落語を再開しても、赤ちゃんの泣き声はおさまらず、 「元気な赤ちゃんだねー、こっちの声が聞こえなくなるほどの声だね」 と、あきらかに落語家は怒りをおさえていた。 観客は笑っていたが、 私は落語そのものがぜんぜんおもしろくなかったので、 やばい、この落語家怒っているよ・・・と、ひやひやしていた。 ところが、しばらくして泣きやんだと思ったら、また泣き出したのだ。 泣き声だけがよく響く。 私が驚いたのは、親が「ああ、もうしわけないもうしわけない、この子ったら・・・」 というそぶりも見せず、その場で居座っていたことだった。 「もうオジサン困っちゃったなー、赤ちゃん、もう少しで終わるからね」 と、落語家は観客からうすら笑いをとるのが精いっぱいなのだ。 赤ちゃんに向けて言ってはいるが、 あきらかに「このクソ女、クソガキ連れてさっさと出ていけ!」 と言いたいのだろう。 落語家の顔がみるみる赤くなって、キレかかっているのがよくわかる。 そこで私は思うのだが、 「スタジオパークからこんにちは」で泣く子といい、 落語で泣く子いい、 赤ちゃんが一番つらく、言葉に出せなく泣き声でしか伝えられないことに、 親がわかってやれよと思う。 きっと、赤ちゃんは 「うるせーと眠れねーだろがっ!」 「このつまんねー落語聞いたって、腹へるだけだろーがっ!」 と、言いたくて泣いているんだろうと思う。
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