・・・なんだよね。というのがなぜか引っかかる怒り

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私はその昔、国際郵便局でバイトをしていた。 そこのバイトは専門学生やら大学生やら、単なるフリーターやら、 まぁとにかく男子が多く、私はすっかり浮いていた。 それでも休憩ともなると、わいのわいのと世間話をするなかで、 オーディオ関連のことを話すとうるさい人。 ファッションのことを語らせたらうるさい人。 音楽を語らせたらうるさい人。 ただ、なぜだろう、不思議と、 パソコンやらネットなどのIT関連を語らせたらうるさい人というのは、 「・・・なんだよね」という言い方をする。 どちらかというと、ていねい語だ。 自慢してると思われない気遣い。 「だからなんだ」とツッコまれないための、ちょっとしたあいまいさ。 「・・・なのさ」とか「・・・なんだ」というとカドが立つ。 聞く相手が「へぇ」という驚く言葉の心地よさがあるから、 うんざりさせないための謙虚な言い方なのだ。 で、なんで、そんな話を持ち出したかというと、最近になって、 秋葉原を歩いていたら、ふと、なんだよね語が聞こえてきたのだ。 バイト時代から10年以上たっている。 私の前を歩いている学生だろうか。 秋葉原らしいチェックのシャツで紙袋を持っている。十年前と変わらぬ出で立ち。 ノッポとポッチャリの二人組だ。ノッポが語り役で、ポッチャリがたまげ役だ。 話しているのは、どうやら新発売のパソコンの各メーカーの特徴のことらしい。 聞こえてくる話が、チンプンカンプンで、 私にはどう言葉に表現していいかもわからない。 ポッチャリのたまげ役が「えーっ!」だの「ほぉー!」だのいう。 ノッポがそれを聞いてさらにエンジン全開で、ぺらぺら話し、 最後は笑いながら、ちょっと照れたように「・・・なんだよね」と、話をしめる。 私が思うに、ポッチャリは話の内容はよくわかっていないと思う。 ただ、合いの手がうまいのだ。 こういう自慢気に知識を語りたがるやつ、てのは、 実は聞き手が、聞き上手だということに気づかない、というのが私は腹が立つ。 ぺらぺらぺらぺら話せる気持ちよさは、聞く相手がいてこそなのだ。 たいがい、そういう聞き役って、おとなしくて、根がいいやつなんだけどね。 ポッチャリ、顔は見てないけど、虫も殺さぬ顔をしてると思う。  
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