怒りの納豆とモンゴウイカ攻撃

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怒りの納豆とモンゴウイカ攻撃

2020 1月20日 わたしと母は週末は外食にでかける。 ふたりとも酒を飲むので、居酒屋的なお店にいく。 わたしは、あたらしい店を見つけると、 すぐ、どんな店か行ってみたくなる。 この話はその、あたらしい店を発見したときの話である。 その店の外観は洋風で、スペイン料理のお店を居抜きしたものだ。 店名は、上田駅前にあった有名店とおなじだったので、 引っ越してきたんだ、 そうわたしは確信し、おやこふたりで店にはいった。 その店は和食の店だった。いぜん、駅前にあったときは、 サラリーマンやらOLでにぎわっていた。 壁いちめんにどんぶりメニューがあり、 かつ丼から海鮮丼など定食類も充実でしていた。 人気店だったので、地元テレビやラジオでも紹介されていた。 調子にのって、テレビ局から生まれた新メニューもあり、 世間では名の知らないレポーターや、 地元ならではのアナウンサーの色紙がたくさんあった。 夜、6時をすぎて、店の中はわたしたち親子だけだった。 さえない店主がでてきて、注文をとりにきた。 わたしは「あの、駅前のお店ですよね!」 ああ、なつかしーなぁ、と話しかけた。 店主の話によると、体をこわして、駅前の店はたたんだのだそうだ。 わたしはよく行きましたよ、並んで待ってたこともありましたよ! さて、なににしようかな・・・壁の手書きでかかれたメニューをみる。 「じゃぁ、まずビール2つ、それと、 納豆の揚げ物と、モンゴウイカのてんぷらでいいや、 とりえずそれで」 わたしは注文し、店内をながめる。 ふしぎなことに、カウンター席は4つあり、みな予約席とあった。 これから客がくるのか、そう思った。 そうやってわたしたち親子はビールを飲み、 飲んでは、料理を注文する。 ほんらいそれで気づけばよかったのだが、 そこがわたしの、にぶいところなのだ。 「・・・じゃあねー、モンゴイカのフライと、納豆とイカの・・・」 納豆とモンゴウイカ、納豆とモンゴウイカ、納豆とモンゴウイカ・・・ この店にはこの2品しかなく、 それを手をかえ品をかえ、やりくりしていたのだった。 せっかく来たのに、しかも、わたしは車で来たので、 とうぜん運転代行を呼んで運転してもらう。 代行料金も4千円ちかくとられ、バカにならない。 それなのに、納豆とモンゴウイカ・・・・ よくよく考えてみれば、納豆は原価がやすく、 モンゴウイカはどうせ冷凍なのだから日持ちがする。 そんなところだろう。 わたしがすぐそこに気づけばいいものを、 1時間すぎてからのんきにそんなことにふとおもったので、 自分自身に腹がたった。 土曜日、7時をすぎても、客はわたしたち親子二人だった。 客はわたしたちおやこふたりきり・・・ わたしはなんでこんな店で飲んでしまったのだろうとくやみながら店をでた。 とうぜんのことながら、 この店は3か月もたたず、消えた。
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