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うなぎ屋というと夏以外は空いている、という勝手なイメージがある。
うなぎ屋というと、年老いた夫婦を中心に若夫婦がついてくるイメージがある。
うなぎ屋というと、昼に食べて、夜は食べないというイメージがある。
うなぎ屋というと、老舗で敷居が高く、
クソガキ来るんじゃねーという威圧感がある。
そんなイメージがある。
私と母は、うなぎというと駅前にある老舗のWしか行かないし、知らない。
もう一軒、街中にある。
門があり庭があり、高級なのかなんなのか、とにかく怖くて行かない。
すると、いつも行くうなぎ屋Wしかない。
その店が、夕方5時半から満員だ。
入った瞬間、
カウンターの客が振り向き、その向かいの店員も一斉に振り向いた。
なにかしら、あ~あ、またかーみたいな期待感ゼロの空気だ。
チェーン店の居酒屋のような「いらっさいやせ! 何名さまで?」というような、
威勢のよさと笑顔などこれっぽちもない。
店内に入ると、女性店員さん3人と目を合わせたのに、
なんの申し合わせなのか「いらっしゃいませ」の声がない。
まさか、「いらっしゃいませ」は客を席に通して初めてお客なのだから、
勝手に「お客」にして期待感をもたせてはいけないルールを作ったのか、と思う。
おばさま店員がそばにいるのに、若手女性店員がいそいそと私たちに近づいた。
「あいにく満員ですが、こちらで座ってお待ちしますか?」
やはり「いらっしゃいませ」をいわないところは、ルールかもしれない。
昨年、夏に来たときは、座って待った。
母が、じゃあ待つ? と私に確認する。
私は即座に「帰ります」といった。
待っている先客が何人かいると、待ちがいもある。
しかも今、夕方5時半だ。先客だってこれからうなぎを食べる時間だ。
最初に目があったおばさま店員の
「あーあ、夜8時すぎはガラガラだから、そんとき来りゃあいいのにさー」
という、もう、うんざりした目が嫌だったのだ。
ここに残念感や、不運でしたね感が漂う目線なら、座って待っていた。
確かに、老夫婦は早く寝るから早く店に来て、早く帰る。
わかっているが、されどバカ高いうなぎは庶民の味。
味は老舗のいい味だが、老舗目線に腹が立つ。
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