歩行者、自転車、車、対向車が横一列に並ぶ怒り

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太陽系のなかで、「惑星直列」というものがある。 最近だと火星、水星、地球が直列になる現象。 以前は、この惑星直列によって、 それぞれの引力によって、みな太陽に引き寄せられ、 直列となった惑星や地球は消滅する、などという説も出たくらいだ。 ただ、そうした惑星直列の確率は天文学的で、まず、起きない。 私の住んでいる田舎は、 人も街ものんびりしている。 気ままに生きている。 そんななかで、この田舎にも惑星直列ならぬ、 「田舎並列」というものが、天文学的どころか、ちょくちょく起きる。 だから、なんだか、腹が立つ。 二車線の道路に、 歩いているお年寄り、 そこを通り過ぎようとする学生の自転車、 さらにその年寄りと自転車を追い抜こうとする私の車、 そこに対向車の会社員。 これらそれぞれが違う速度で移動しているのに、 せまい道路で四者が並列となり、 気を抜くと接触事故になりかねない現象が起きる。 申し合わせをしているわけでもないのに、 なにを息を合わせているのだ! ふと思う。 まして年寄りと学生は私に対して後ろ向きだから、 私の存在に気づかないはずなのに。 私はあらかじめ、数百メーター前から、 その偶然が起きるのを予感している。 ああ、このままだと田舎並列になる。 ならば、私の車の速度をゆるめよう、そう思いながら、 なぜか、そうはさせまいとするのか、予定調和が起こるのだ。 そのとき、年寄り、学生、私、対向車の社員が、 同じ意思が働くのか、微妙にそれぞれの速度を変える。 そうして、心をひとつにしてしまい、結果、田舎並列が完成する。 学生が下校するときにも、この現象はたびたび起こる。 せまい通学路、女子中学生四人が横一列に話しながら歩いている。 そこへ、私の車が徐行しながらそこをすれ違う。 そんなときにかぎって、 おばはんスクーターがそのわずかなスキをねらって、 私の車と中学生の間を、さっそうと通り過ぎる。 ここに一瞬だが、女子中学生四人と私の車、おばはんのスクーターが、 せまい道路に横一列に並ぶのだ。 もう、危ないったらありゃしない。 それがいったいどうした思われるかもしれないが、 つまり、私はその現象を嫌っているのに、 なぜかそうなってしまうのに、イラッとくるのだ。
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