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日曜日。天気よし!
「ミホ姉、イベント日和だよね」
「天気がいい方が、尾行はしやすいね。雨降って傘さして尾行するのはしんどいもん」
今日、私とサツキは父親の尾行をする。
ショッピングモールのイベント広場で、美少女戦隊プリティムーンのファンイベントがあるのだ。
私は朝から父の行動を横目で逐一チェックしていた。
今まで思いもよらなかったが、日曜日、昼近くまで寝ていることが多かった父が、ここ半年くらい、ときどき妙に早起きになることがあった。
そして「本屋行って来る」「映画を見て来る」「学生時代の友達が会いたいってさ」など、ありがちな用事で出かけていく。
一度、母が「映画?私も行きたい、何見るの?」と言ったら、気持ち悪いホラー映画のタイトルを出して「私パスだわ」と言われていた。
あれはすべて嘘だ。すべての用事は嘘で、美少女戦隊プリティムーンのイベントへ行ったのだ。
だって映画見たっていうから、見た映画の感想を求めたら、「忘れた。あんまりおもしろくなかった」ばっか言うし、本屋行ったというわりに、読書している気配はない。あんなに何度も行くんだから、1冊くらいは買うでしょう。でも本を買ってこない。
そんなに好きなのかプリティムーン。
でも、今回の尾行、サツキは乗り気じゃなかった。
「お父さんがプリティムーン見て、にやけている顔見たくないし。もう絶対に口聞きたくなくなる。なんかキモいじゃん」
確かにそうだ。でも何かひっかかるのだ。
本当に父はアイドルマニアのおじさんになったのか。
それとも何かプリティームーンに惹かれる秘密があるのか。
何の兆候もなく、あまりにも急過ぎて、それが気になるのだ。
私たちがドレッサーの前で支度をしていると、父が「出かけるのか」と聞いてきた。
私は適当に映画館の名前を出して、サツキと映画を見に行くと伝えた。
私は父に聞いた。
「お父さんも出かける恰好じゃん? どこ行くの?」
「ちょっとね、友だちに会いに。相談があるっていうんだよ」
ふ~んと、私はそっけない返事をしたが、心の中で「出た~、友だちに会う、何回目だよ」と悪態をついた。
「気を付けて行って来いよ。じゃあ」
私はうなずいた。でも、サツキは父と視線を交わすことはなく、姿が見えなくなってから「キモっ!」とつぶやいた。
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