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高校の卒業式が終わって、母さんに聞かれた。 「アンタ、制服どうする?」 「え、知らね。もう着ねーし、捨てても良いんじゃねぇの」 ベースの練習で、忙しいんだよコッチは。なんせ、後三日で卒業ライブなんだから。 中学の同級生同士、四人で組んだバンドは、このライブをもって解散する。 進学するヤツも就職するヤツもいるけど、別に地元から離れるわけじゃない。 なぜ解散するのか、よく分からない。 誰が言い出したのかも、よく覚えていない。 でもそれが、カッコイイような気がしたんだと思う。 ベースの音に混じって、びみゅ~ん……と小さなノイズが聞こえた。 なんか、飛んでる?蚊?ハエ? 立ち上がってよく見ようとしたら、今度はケータイが鳴った。ディスプレイに、ギター担当の「勝」の文字が点灯している。 「おいっす。どーした?」 「いやぁ……マジでやっべぇ」 「覚えらんない?」 卒業ライブだから、気合いを入れて新曲が三曲入っている。勝は覚えが悪い方で、いつも仕上がりはギリギリだった。 「じゃなくてぇ、克己がやっべぇ」 「は?」 「ビョーキが出た」 「ええ……今?」 克己はメインボーカルとサイドギターの担当だ。歌はむちゃくちゃ上手いけど、メンタルが弱いというか……気分の浮き沈みが激しかった。ビョーキとは、その事を言っている。 「謝恩会で、またカノジョと大喧嘩になっちゃってさ。もぉ……カンベンしてほしいよな。俺、あの子キライかも。克己も『金森の方が良かった』なんて言っちゃうし」 「それはマズイっしょぉ」 勝と克己は同じ高校だ。そのカノジョも同級生で、よく練習にも顔を出す。このカノジョ、高校入って何人目だろう?克己はとにかくモテる。 「克己も自分で激落ち。ヤバイよ、まじで」 「カノジョも何がそんなに気になんの?もう一年も前でしょ」 「やだねぇ。嫉妬深いのは」 生まれてからカノジョいない歴更新中の勝が言うと、ちょっと笑える。
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