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小学校から中学校へは、全員持ち上がりだった。ここで別の小学校から来た、克己、勝、光一と出会った。
カナブンがどうしていたかは記憶にないが、入った部活が美術部だと聞いて笑ったことは覚えてる。
「いかにもじゃん」
「ジッミ~」
それだけで終った。カナブンなんて、クラスが違えばもう用事がない。住んでいる世界があまりにも違いすぎた。中学生になって、カナブンどころか虫にだって興味はない。音楽に目覚め、バンドを結成した。それでも時々、バカにすることだけは忘れなかった。
……それを克己も聞いていたはずなのに。
カラオケ事件は、親が示談で済ませた。精神病院に入れられた克己は、俺らが見舞いに行ってもほとんど口を利かなかったが、数週間で退院して来ると、さっそく新しいカノジョを練習に連れてきた。それが今のカノジョだ。付き合いとしては、最長記録になる。
飛んでる。虫が。カナブンじゃない。そんな大きくない。
「だからね、俺が思うにはぁ、一度三人で話し合った方がいいと思うんだよね」
勝の声に我に返った。
「三人?」
「克己とカノジョとぉ、カナブンで」
「ええ?だって別れてんのに?」
「うーん、だから話し合うっていうか、説得してもらうっていうか」
「カナブンに?それを頼もうって?」
馬鹿馬鹿しい。カナブンごときに嫉妬するカノジョが意味不明なのに。だけど、問題はビョーキを発症した克己だ。もう時間がない。
「克己が何て言うかな?」
「言ったんだけど、何も言わなかった。進めちゃっていいと思う」
「つーか、カナブンが来るかぁ?」
「家、近いじゃん。ちゃちゃっと連れてきてよ」
「はあ!?俺!?」
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