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「斎藤!手を貸すか?」
俺と同い年だと言う直属の上司の早乙女課長が
足を引き摺る彼女に声を掛けると
「課長、ありがとうございます。
あそこの階段だけ、いいですか?」
近代的なともいうか、
個性的な建物の中にあるこの会社には
あちこちに2~3段の階段がある。
その代わり、仕切りはパーテンションだけで
ただっ広いフロアの中に2つか3つの部署があり
壁がない分だけもの凄く広く感じる。
彼女の腰を抱くように
早乙女が階段を上がらせると
「ありがとうございました」
上がり切ってすぐにお礼を言われて
早乙女もすぐに手を離した。
「構わない、いつでも言ってくれ」
微笑んで話す彼に対して、彼女の方には笑顔が見られない。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
それでも、深々と頭を下げて謝る姿は
渋々という訳でもないし、
心からのお礼だと感じられるから嫌な気も起きないのだろう。
「まぁた斎藤さんったら、あんな事して!」
俺と同じく、彼女達を見つめていた
俺の隣を歩いていた女性陣達が顔をしかめている。
「なんの事?」
俺が不審に思って聞いてみれば
「あの人ってあの足じゃないですか。
だから自分一人では歩けませんって言う態度で
男の人に寄り添ってもらっているって言うのがミエミエなんですよ」
明らかに好意を抱いていない様子の彼女達。
少し暗い感じがするさっきの彼女だけど
きっと、笑顔を見せ明るい表情をすれば
美女と呼んでもいいくらい美しい顔立ちをしている。
しかも、スタイルも結構いいようで
早乙女が腰を引く手が
少し羨ましく感じる程いいプロポーションだと見受けられた。
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