それぞれの時計が動く時 1-1

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「斎藤、昨日の東堂さんとこのHELPはどうした?」 早乙女が斎藤に声掛けると 「遠隔操作で済みそうだったので そちらの方法で、もう終わらせました」 視線は課長に、でもキーボードを打ち付ける手は止まっていない。 「わかった。 お前はなるべく、社内から出ない仕事に専念しろ」 きっと、彼女の引き摺る足を考えての事だろう。 「ありがとうございます。 でも、急ぎでないようでしたらあたしも現場に向かえますので」 やはり、手は止めぬままに返事を返した。 「よし、その意気だ!」 彼女に拒絶とも取れる返事を返されたのに 早乙女は怒るどころか笑っている。 彼女を見れば 既に終わった事として仕事に集中しているし・・・・・ 「大林!ちょっと来てくれ」 田中部長が、ご自分の個室から顔だけ出して 俺と視線が合うと、手で来い来いと振っている。 「はい」 頷いて立ち上がる時に 目の前の彼女と視線がぶつかったが それも瞬時の事で すぐに視線はそらされて、パソコンに向かってしまった。 待たせる訳にはいかないので 部長の部屋に入ると 「来たばっかりで悪いが、これを始めてくれ」 渡された資料に目を通すと 「了解です」一言だけ返し そのまま立ち上がろうとして 「なにか不便な事とか質問とかはないか?」 声を掛けられてしまったから、 浮かそうとしていた腰をもう一度ソファーに沈めた。
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