それぞれの時計が動く時 1-1

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「不便な事は今のところありませんが、 ひとつ聞いてもいいですか?」 「なんだ?」 「俺の目の前のデスクの彼女って 足が・・・・・」 俺が言いたかったことがすぐにわかったようで 「あぁ、斎藤の足の事か? お前にも迷惑をかけるかもしれないから話しておくが あいつは交通事故の影響で、少し足に障害が残ってるんだ。 だから、HELPが来たとしても 現場に向かうのはあいつ以外の人間になる。 それをわかってやってくれな」 「わかりました」 聞きたかったことは聞けたから、 部長の部屋から出て自分のデスクに向かうと 今度は彼女はこちらを見てくれなかったから 視線が交じり合う事がなかった。 パソコンを起動させている間に 目の前の彼女を見て ---交通事故か・・・・・・ ---痛かったろうな・・・・・・ どんな事故かも知らないけど きっと、もの凄く痛かった事は伝わる。 ---怖い思いをしたんだろうな・・・・・・ 何故だか、会ったばかりの彼女が味わった 死の恐怖を想像して、遣り切れない気持ちが湧いて来てしまった。
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