それぞれの時計が動く時 1-1

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ある週末金曜日。 俺がこの会社に来て、そろそろひと月経とうとしている。 田中部長や早乙女に言われた通り 彼女は、外勤はほとんどせずに 社内の仕事をほとんど一人で引き受けてこなしていた。 俺達エンジニアは、提携先の会社から要請があれば 会社を訪問して依頼の仕事を受けると 問題を解決して来なくてはならない。 30分で済むような簡単なモノだったらいいが ほとんどが何時間か要する問題ばかりで その間、自分が引き受けていた仕事にまで手が回らないから 彼女の存在が、俺達にとってはありがたいモノだった。 だけど、他の部署の女性社員にとっては その光景が彼女が俺らに対して媚びる態度に見られるらしく 俺の耳にも、彼女に当てられる不躾な態度や 辛辣な言葉を掛けられていると言う噂が届いて来る。 まぁ、彼女自身、そんなこと気にもしていない素振りで だれともつるむ訳でもなく 淡々と業務をこなしている姿は潔い。 彼女が唯一気を許しているようなのは 隣の総務課にいる増木多恵と言う 彼女と同期で同い年の女の子と 俺らの上司の田中部長の二人だけのようだ。
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