それぞれの時計が動く時 1-1

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時間を置かずに駆け付けた松本医師に 心の中で"廊下を走ってはダメですよ?"とつぶやいた。 そんな事を思っているともつゆ知らず 松本医師は、 「どうですか?痛みはありますか?」 体じゅうを確かめるように触りながら聞いてくる。 「ここは・・・・・・病院ですか?」 ナーススタイルに、 松本医師は手術着を着ている姿を見せられれば いやでもここが病院だとわかるが 一応確認の為に聞いてみた。 「そうですよ、病院です。 あなた達ご夫婦が乗られていた車に、他の車が突っ込んだんです」 松本医師の話しで、すべてを思い出した。 「真治は? 一緒に車に乗っていた真治はどうしたんですか?」 体を持ち上げて松本医師に問いかけた途端 激痛が体じゅうを駆け巡って、またしても 「___っう!」痛みに悶えた。 「まだ起きちゃダメですよ! あなたは背中をひどく打ち付けてます。 骨折等はありませんでしたが、しばらくは動かさない方がいいです」 左手に打たれていた点滴に 注射器で何かの液体を打ち込んで 「痛み止めも淹れておきましたから・・・・・」 痛み止めを打ってくれるのなら じかに腕に打ってくれればいいのに・・・・・ 事故の記憶を取り戻したと同時に 真治に裏切られた事実も思い出したわたしは 助けてくれた医師に そう心の中で罵ってやっていた・・・・・・
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