それぞれの時計が動く時 1-1

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事故後、4日目には一般病棟に入れた。 父の計らいで、個室に入らせてもらい あたしに会う機会を窺っていた真治の家族が 一般病棟に移ったその日の午後 面会時間が始まるその時間に見舞いに来た。 「由美さん・・・・・・ この度は、本当に申し訳ない!!」 真治のご両親は ベッドに横たわるあたしのすぐそばの床に土下座し 深々と頭を下げる。 その後ろには、真治のお姉さんの若葉さんも 申し訳ない顔でうつむいている。 今回の事故の相手が 真治の浮気相手だと言う事は 当事者から聞かされて知ったと話してくれた。 足の骨折だけで済んだ彼女は 警察の事情聴取にも素直に答え その事実は、すぐにあたしと真治の両親にも伝えられたらしい。 もちろん激怒したあたしの両親は すぐに真治との結婚を破断にすると佐藤家に持ち掛け 自分の息子に非があると認めた佐藤の両親も その申し出を飲み込んだ。 ただ、あたし達は運が悪い事に 式を挙げる前の日に、婚姻届けを出してしまっていた。 だから、実際あたしは斎藤由美ではなく佐藤由美になっている。 しかも、真治が意識が戻らないとなれば 勝手に離婚する事も出来ず あたし達の結婚は継続されたままの状態だった。
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