それぞれの時計が動く時 1-1

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-------5年後--------------- 「今日からお世話になります、大林淳です。 よろしくお願いします」 大きな会議室に集められた社員を前に 俺は緊張しながらも挨拶をして、頭を下げた。 「大林君は、結構優秀なSEだと言う事は みんなも知っていると思う。 これからは、みんなも大林君に負けないように頑張ってくれ」 隣に立つ、俺の上司田中部長が締めくくり 俺の自己紹介を兼ねた朝礼が終わった。 会議室から自分達の部署まで戻る時には 俺の周りには、目をハートにした女性が集まる。 中学の頃から背が伸びて来た俺は イギリス人の祖父を持つクウォーターの血筋からか 結構イケメン部類に入るらしくて こうやって女の子に囲まれる事にも慣れている。 「大林さんって、イギリスから来られたんですって?」 「こちらの会社にはどうしてはいられたんですか?」 「もうお引越しは済まされたのですか?もしまだならお手伝いでも」 俺の事なんて放っといてくれよと内心毒づきながらも 「この会社には、先輩に誘われて入りました。 引っ越しも済みましたので、心配ご無用ですよ」 面倒臭いから、質問をいっぺんに済ませて おまけで微笑みかけてやれば 俺の周りにいた女性陣達が、呆けた顔で俺を見ている。 ・・・・・・・いや、違う。 ひとりだけ、こちらを不審な目で見ている女がいる。 少し足を引きながら歩く彼女は みんなよりも遅れて歩いて付いて来ていた。
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