第1章

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孫と息子が帰って来た。 孫の手には幼稚園からもろてきた笹と短冊。 そうや、もう、そんな季節や。 思い出すのはあのひとのこと。 ええ夢見せてもろた。 ほんま楽しかったんや私あの頃。 わかってたんやけど、 わかっててお金あげててん。 だって毎日楽しかったんやもんあの人のお陰で。 せやからあれは私からあの人へのお礼で、 そない思たら今もなーんも悔いはしてへん。 この前当時の追っかけ仲間が教えてくれた。 あの人はもうおらへんらしい。 どこかにいって今はあの人の子供が座長らしい。 私の子? ないなぁ、私以外にもいっぱいいい人居てたもん。 私は作らんとこて約束してて3年だけで別れたもん、七月七日の雨の日に。 これで私ら織姫彦星、こんなおばちゃんになっても思い出せる、若いあの日のええ思い 出。 気付けば孫がばあちゃんばあちゃんて手ぇ引っ張ってた。 この子もまた誰かにええ夢見せる、ええ男になるんかなあ。 ばあちゃん、あんたに、なんでも買うたる。 あの時あの人にあげてたように。 あんたのこれからに希望をあげる。 笹の葉さらさら、まだ乳臭い、可愛い可愛い私の孫の手。
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