第1章 堀ノ内駅のホームで

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
ふたりを車で待っていたのは、 学生時代の仲間のひとり、 片岡三郎だった。 3人は、友人の披露宴に参加するため、 観音崎京急ホテルへ向かった。 京急堀ノ内駅から、 横須賀街道に出て、車を走らせた。 「和歌子と典夫が、ついにゴールインか..」 ハンドルを握り、三郎は話を続けた。 「俺は、てっきり、オマエたちが  先だと思っていたのにナァ..」 「あははっ、三郎ったら何言ってんのぉ」 美代子は、声が大きくなっていた。 「まさか、美代ちゃんが、  たかしを振るとは思ってなかったよ」 三郎は、おどけるように言った。 ワタシ、振ってなんかいないのに.. たかしの事を好きだったけど。 たかしは、はっきりとは言ってくれなかったのだ。 わたしが、諦めようと思った頃に、 元夫の柿平直人と出会ったのだった。 沖田たかしは、その話題には触れずに、 何かを思い出していた。 「あのサァ、覚えてる?  学校の帰り道、皆で公園に言ってさ、  あの日、雪が降っててさ..」 「そう、そう、典夫が、道端に落ちてる  一万円札を拾ったんだよな?」 三郎は、興奮して声が高くなっていた。 「あれ、雪に埋まってたんだよな?」 たかしは、思い出していた。 「そうだよ、典夫が、地面の雪を足で掻いてたら  一万円札が出てきたんだよなぁ..」 「典夫が、一万円札を両手で持ってさ  これ、本物かなぁ?って」 たかしが、笑いながら言った。 「典夫は、一万円札をかざしてさ、  あぁっ、透かしがあるから本物だぁって  笑えるよな、あいつ」 三郎も思い出し笑いをしていた。 「そして、私たちは、一万円札を持って、  横浜の中華街に行っちゃったのよ」 美代子が、話を続けた。 「もう、時効だよ..バカな事ばっかりやってたなぁ」 三郎は、溜め息をついた。 「あの日、三郎の車に乗り込んで  横浜行って、中華をたらふく食べて..」 たかしの話に、美代子が言葉を被せて来た。 「帰りに雪の中、渋滞に巻き込まれ、バチが当たって」 美代子が言うと、三郎が続けて言った。 「典夫が、歯が痛いっーって騒いで」 「車の中で、和歌子が典夫を介抱したんだよなぁ」 たかしが言うと、みな爆笑した。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!