第2章 スレ違いの恋心

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美代子の実家は、堀ノ内駅の先の、 県立大学駅から近かった。 美代子の実家の庭は広かった。 美代子の母が、生前、 大切に育てて来た、庭木や草花が沢山あった。 玄関を開けたが、人の気配は無く、 家の中は静かだった。 「なんか、今日みんな出掛けてるみたい」 沖田たかしは、台所に立ち、 美代子の家事を手伝った。 「冷蔵庫のスルメイカ、使っていい?」 たかしは、もうまな板を用意していた。 「どうぞ、お父さんと、たかしの  お酒のつまみにして頂戴。  昨日の残りのカレーがあるから  いいよね?」 美代子は、自分がまだ スーツ姿でいる事に気がついた。 「わたし、着替えてくるね?」 美代子は、そういうと、 母が使っていた白い割烹着を、 たかしに渡した。 「サンキュー」 たかしは、少しも嫌がらずに割烹着を来た。 「かってしったる、なんとやら..」 たかしは、呟いた。 沖田たかしは、包丁さばきがうまかった。 たかしは、スルメイカのワタを抜き、 それを小皿によそった。 イカの皮を慣れた手つきで、 くるんとむくと、刺身を造り、 ゲソは、天ぷら用に、 エンペラは、お刺身用に加えた。 美代子は、2階に上がって、 スーツをクローゼットにしまった。 たかしは、何でも進んでやってくれるから、 美代子は、気が楽だった。 美代子の父親は、昔堅気で、 家事など出来るタイプではなかった。 美代子が、柿平と結婚するとき、 実家の事が心配だったが、 弟達が、父の面倒は自分達が見るからと、 美代子の婚期が遅れないようにと、 家事を分担してくれた。 あんな父親でも、少しは頑張れるんだと びっくりしたものだ。 父親が、正座をして洗濯物を畳んでる姿は、 どこかぎこちなかった。 美代子が離婚して、実家に戻ってからは、 元の父親に戻ってしまった。 美代子は、子供がいなくても良い、 そういう選択肢もあると思った。 わたしが、本気で、柿平を愛しているなら、 許せるはずなのでは無いか? 美代子は、悩み苦しんだ。 頭の中は、混乱したまま、 ただ時が過ぎていった。 柿平は、別れたく無いと父に頭を下げて頼んだ。 父親は、順番が違うと納得しなかった。
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