第3章 新しい航路

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第3章 新しい航路

立会川駅近くの、北浜川児童遊園に、 その勇姿の像は立っていた。 「うわぁ、格好いい!やっぱり来て良かったぁ」 咲子は、嬉しそうに、満面の笑みを浮かべた。 若葉は、特に歴史に詳しい訳では無かった。 ただ、こうして、坂本龍馬の像を見ていると、 なんだか、胸が踊るような気持ちになるのだ。 身分差別を受けていた若者達が団結し、 やがて日本を動かしていく.. その先頭に立ち、舵を取っていたのは 坂本龍馬なのだ.. 偉大な人の姿を見ると、 自分がいかにちっぽけな事で悩んでいるか、 という事に気付かされるものだ。 若葉が、感慨にふけっていると、 突如、咲子が言い出した。 「アタシ、お腹すいた..帰ろうよ」 ライオン女子は、やっと、 家に帰る気になったようだ。 「おじさん、心配しないで、  格安で泊まれるように、  アタシが交渉してあげる」 咲子は、頼もしかった。 その時の、若葉忠正は、 「咲子丸」という船に乗り、 船長の咲子に忠誠を誓った 船員のように、従順だった。 ふたりは、仲の良い親子のように、 寄り添いながら歩いた。 電車に揺られながら、ふと、若葉は、思った。 これは、現実なのだろうか? 自分はもしかすると、夢を見ているんじゃないだろうか。 三浦海岸で、若葉は、酷い頭痛に襲われた。 頭をハンマーで殴られてるみたいに、 ガンガンとして.. そのあと、うずくまって、 気が付いたら、ライオン女子に出会ったのだ.. もし、夢なら、今覚めて欲しい.. 自分は、希望ある未来に向かって 行けているのだろうか? それとも、いつものしくじりの道へと 歩んでいるんだろうか.. どうしたら、坂本龍馬みたいに、自分にとっての 正しい道を選択する事が出きるのだろうか? 馬鹿馬鹿しい.. 俺は、本当に頭が可笑しくなったようだ.. 偉人と自分を比較するなんて.. 隣に座っている咲子は、疲れて眠ってしまい、 若葉の肩にもたれ掛かっていた。 若葉は、遠い昔の時代に想いを馳せた。 龍馬についていった若者達も、 さぞかし勇気が行っただろうな.. 前人未到の道を、道なき道を行く人に、 駆け引きなぞ..きっと、 命を掛けて挑んだのだろう。 若葉は、自分の知っている海原を思い浮かべた。 三浦海岸の青と白の交差を。
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