第2章 中年男と女子高生

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「アタシ、さくこっていうの、城谷咲子」 咲子は、お弁当のタコのウインナーだけ摘まんで、 若葉忠正に、弁当を渡した。 「全部、食べていいよ」 若葉は、申し訳なさそうにしたが、 咲子の弁当を頂く事にした。 まさか、こんなことになるなんて.. 俺も、落ちぶれたものだ。 とにかく、絶望していても、仕方ない。 かといって、行くあてもなければ、 いい考えも思いつかなかった。 気がついたら、 日斗美との思い出の、海岸に来ていたのだ。 「学校は、この時期は夏休みでしょう?  せっかくお弁当を持って来たのに、  僕が食べてしまって申し訳無い..」 若葉忠正は、口調が丁寧だった。 「いいの、お母さんと喧嘩して、出てきちゃったの」 城谷咲子は、さらっと言った。 弁当持参で、家出するってぇ、 ははは、冗談を言ってるのかな? まだ、幼い顔つきだし.. 若葉忠正は、心の中で呟いた。 若葉にも、妹がいた。 若葉の両親はすでに他界していて、 妹は、早くに結婚し、新潟に住んでいる。 兄として、妹に頼る訳にはいかなかかった。 日斗美は、今頃どうしただろう、実家に戻っているのだろうか? 「おじさん、若葉さん、って言ったっけ?  おじさんの家族は?」 咲子は、鞄から、あんパンを取り出してかじった。 「妻がいたんだけど、行方が分からないんだ.. 仕事も、家も、無くなってしまってね.. 取り合えず、安い宿でも見つけないと..」 若葉が、最後まで話終わらないうちに、咲子が喋りだした。 「安い宿ならあるよ、うち、民宿やってるの」 咲子は、真面目な顔で言った。 「そ、そうなのかい?  泊まらせて貰えないかな?そのぉ..」 若葉は、ぱっと顔色が明るくなった。 「いいけど、条件があるの..」 咲子は、ニヤっと笑った。 な、なんなんだろう、 俺の身の上を話しても、対してびっくりもせず、 だいたい、愛情たっぷりの弁当を持って、 家出とか言って、この娘、信用出来るのだろうか? 「おじさんの、逃げた奥さんの、実家ってどこ?」 咲子は、高部の顔をじっと見た。 「えっ、言わないといけないの、  お、大森海岸だけど..」 若葉忠正は、冷や汗が出てきた。
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