第1章

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自分が自分を認識したのは何時だったろうか? 遠い、遠い、昔、自分がそこに存在する事を認識したが、自分が何者で、何故そこに存在するのか分からず、理解する事も出来なかった。 ただそこに存在し、眼下に見える山々とその間を流れる川を眺めて日々を過ごす。 それはそれで面白い日々だった。 ある時は大地が揺れ山の一部が崩れ、地滑りを起こした土砂が川をせき止める。 川をせき止めた土砂が水の流れに耐えきれず決壊、大きな岩を含む土砂が遥か彼方まで押し流されていく様子。 またある時は、山に降った大量の雨が川に流れ込み、川幅が数倍から数十倍に広がると、山肌を削り取り崖を作る。 眼下に見える山や川だけでなく、明るく暖かい光を降りそそぐ太陽が、空高く昇る方向にある巨大な山が火柱を上げ、噴出した煙で空が黒く染まった事もあった。 そのような風景を眺め、長い、長い、年月を過ごしていた私の目に、ある時、見慣れないものが映る。 それは100人前後の老若男女で構成された人の群れで、荷物を担いだ老人や女性と子供を中心に、その周りを武装した男達が周囲を警戒し助け合いながら、私がいる山の頂に登って来た。
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