12人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな中学の頃の話を聞き出され、余す事なく語らされた僕は、いつもの第二図書室でぬるいお茶を飲み干した。
「そう、だから君は……ボッチなのね」
「可哀想なものを見る目で見ないでください。けして多いとは言えませんが友人はいます。ボッチではありません」
薄暗く、埃っぽい空気に甘いお茶の香りがちぐはぐと混ざる。
カビの香りと、古くなった紙の香り。
ここは読み古された本たちが、廃棄されるのを待つ部屋。しかし永遠にその時が訪れる事はなく、実質本の墓場。
そんな空間におしゃれなテーブルセットをちゃっかり設置しているのは、僕じゃなく高校三年生女子の先輩だ。
地上は夏の暑さでとても生きた心地がしないと駄々をこねた先輩は、このうすら寒い空間に入り浸りになっていた。
実際ここは涼しい。
窓もなく、空調整備もないので、この湿った空気がクーラー代わりだ。不健康だ。
「さて、話す事は話しました。明日から夏休みなんですから、ちょっとはうきうきさせてくださいよ」
「あら、君って夏休みにうきうきするタイプなの? 知らなかったわ」
ぬるいお茶で口の中を潤した先輩が、わざとらしく驚く。
最初のコメントを投稿しよう!