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なぜお茶がぬるいのかというと、先輩お気に入りのハンディマグを自宅で落として壊してしまったらしく、ペットボトルにお茶を入れてきたのだが、放課後になるまでの間にすっかり室温と同じ温度になっていたのだという。
「ねぇ、話は変わるけれど、その飲み物と薬をくれたお店は、どうしたの?」
先輩は小首をかしげて正面に座る僕を見る。学校でちょっと噂になるくらいに美人な先輩の可愛らしいしぐさにドキッと来ないわけではないが、出会い頭の初っぱなの印象により僕の先輩に対するときめき指数はある一定で常に保たれている。
ゼロだ。
「然るべき人に話して、とある組織が接触し、お店は畳んで貰いました」
「君って、悪いひとねぇ」
そう言いながら、僕を見る目が優しく細められているのを見ないようにして「僕がいい人な訳ないでしょう」と返す。
「そうやって君の中学校に被害が広がらないように、秘密裏に片付けてくれたのね」
本当はそんな"然るべき人"と連絡を取ったりもしたくなかったくせにね、と先輩はわかったような事を言う。
大当たりだけど。
「僕は、もう行きますよ」
席を立つ僕に先輩はまたしても待ったをかけた。
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