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「もう少し、外の気温が下がるまでここでゆっくりお茶しましょうよ」
「丁重にお断りします。一刻も早く夏休みの宿題をやって、遊ぶ時間を作りたいので」
「夏休みは明日からよ! 今日から宿題をやるだなんて、君は優等生なの?」
先輩の優等生の定義というものがいまいちわからないけど、遊ぶために宿題を早く終わらせるというのはあまり優等生という枠にははめられない気がする。
しかしどうやら暑い所が苦手らしい先輩に、あとほんの少しだけ付き合ってやろうか。でないといつまでも食い下がられそうだ。
仕方なくもう一度椅子に腰かけると、先輩はホッとしたように微笑んだ。
「"あの時"君は、彼が死ぬのを止める事ができたんじゃないかしら」
やっぱり帰ればよかった。そうすればこんな質問、されなかったのに。
「彼は……もう決めていましたから」
「そうかしら。本当に? なぜそう言い切れるの?」
身を乗り出し顎を突き出し、僕へ接近する。逃げ出したくなる僕を先輩は逃がさないと言わんばかりに、視線で絡めつけた。
「君は、彼の手から瓶を奪い取る事もできた。ペットボトルを奪い中身を捨てる事もできた、そうよね?」
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