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もちろんそんな意味で彼がそう言った訳ではないだろうけど、事実中庭に集合したのは僕と彼だけだった。
「で、宝探しってまず何をするの?」
並んで腰かけたベンチは、少し古びていてギシ、と固い音を鳴らす。こんなひと気のない場所に男二人とは、シチュエーション的にはかなりキツいものがある。
二人ともいわゆる男らしい体格とは言えないため、暑苦しくないだけマシか。
彼は僕のそんな考えなどまったく露知らず、ひとり楽しげに微笑んで僕を見る。
「ぼくの宝探しはね、ほんとはもう終わったんだ」
なんと、いつ始まったのだ。もう終わったって、じゃあここに来た僕の意味ってあるの?
「大事なものを、そこの木の下に埋めようと思ったんだ」
ほら、と今度はきちんと穴を掘るためのスコップや軍手が用意されていて見せてくれる。
「帰りのホームルームでさ、先生がなんの話をしたか、覚えてる?」
カラン、とスコップが地面で音を立てた。脈絡のない話の流れについていけず、僕は一瞬フリーズした後、思い出そうと頭を捻る。
「あれ、なんの話だっけ」
確かプリントを配りながら、何かを喋っていたような……。
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