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ただし、二粒だけ。
始めにどのくらい入っていたのかなんてわからない。瓶だってラベルも貼られていない透明なもので、ありふれたものだ。
彼はいったい、何をしようとしているんだ。
「ぼくね、自分がいじめられる側になるなんて、思ってもいなかった」
僕は、彼がいじめられている事を、知らなかった。
「ぼくね、いじめがこんなにも辛いものだって、知らなかった」
僕は、いじめという存在そのものに、無頓着だった。
「ぼくね、君の存在が、嬉しかった」
僕は、君という存在が、こんなにも恐ろしいとは……思いたくなかった。
「君だけは、ぼくを見下したりしなかった。君だけだった」
思い返してみれば、彼は誰かと一緒にいる事は少なかった。僕もひとの事を言えないけど、友人と呼べる人間はそう多くはない。
「今日、ここに来てくれたのも君だけだし」
彼は、ベンチの端に置いておいてあったのだろう、水の入ったペットボトルを手に取った。
「僕の宝物なんだ」
「中身は……毒だな」
毒の知識は薄い。彼が持っているのは僕には知り得ないものだ。
でもそれが何をどうするものなのかは、わかる。
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