夕暮れに待つ

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 あなたと出会ってから早三年が経とうとしています。  暑い夏が来て、実りの秋が来て、厳しい冬が終わる頃、あなたは卒業ですね。  進路の相談を、当人ではなく私に先に相談されるお父上の心情が嘆かれます。  お父上はどうも、はじめに交わした約束の合格点がこのままずっと得られないと思われているようです。  悪戯にあなたを試したわけではなく、私ははじめからあなたを娶る気なんてなかったから敢えて無理な条件を出しました。  周りが不安難色を強めても、あなたは頑張れば報われると信じていましたね。  温室で育てられたあなたが厳しい指導に音を上げず、うちにふさわしい人間になろうと努力していました。それは、この三年間誰よりも近くであなたの成長を見てきた私が一番分かっています。  梅雨が明けたら夏です。あなたはもう夏休みのことしか考えてないようですが、その前に進路面談があるそうですよ。  今度は悪い冗談だと笑われないように、お父上任せではなく、ご自分の力で進路を開いてください。  預けた封筒にはお父上宛に私の考えを綴りました。無事に届くことを祈ります。  来年の春にはあなたを迎え入れられるように、私は万全の用意を進めておきます。 了
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