雨に待つ

　天の川の悲しい話を知っているかい？

　彼と彼女は雨が降ると会えないんだとさ。困ったねぇ。困ったよ。

　私達はほら、雨が降った日にしか緑の上で会えないから。

　湿った日、空がどんより雲に覆われた日、みんなが急ぎ足に道を駆ける日、空さんが泣いた日。

　私達は濡れた緑の上でつるつると、遊びましょ、楽しみましょ、何をしましょ。

　近付きましょう、こうして近くでお顔を拝見するのは久しいですから。

　えっちらほっちら、うんしょ、うんしょと。

　あ！　あぁー！　滑ります、滑ります。落っこちちゃうよ、これは大変だ。

　レスキュー隊、レスキュー隊。私の大事な人を助けてよ。

　はいはい、しょうがないなぁ。手間とらせないでよ……。

　ありがとう、ありがとう。ついでに私達を近づけてくれてありがとう。

　これでほら、一緒だよ。一緒だね。

　雨で綺麗に洗われた緑の上で、私達は自由だ。自由だ。

　ねぇあなた。なんだい？

　もう少し、もう少しだけ近付いてもいいですか？