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やっとテーブルの上での話題が、お互いのことになり、合コンらしくなった。
よかったと思う。
けど、疲れた。
目の前の小野が気にしてこっちを見ていた。
「大丈夫? 酔った?」
「あ、大丈夫です。あまり飲めないんです」
優しい人だ。
小野の優しさは井上とは違う。
人の心に痛みがわかる、そんな人だろう。
もしかすると、この人も同じような痛みを味わったのかもしれない。
そんなことを思っていた。
そうやって友香はじっと小野を見ていたらしい。
西宮が突っ込んできた。
「おや、お姫様は小野くんがお気に入りのご様子」
そう言われて、皆が注目していた。
「姫っていう言い方、やめていただけますかっ」
かなりきつい言い方になっていた。
怯んだのは西宮だけではなく、小野までが目を丸くしていた。
「今のって、まさしく姫君のお言葉だよな」
またそんなことを言われた。
その夜は、友香は真っ直ぐ家に帰った。
小野とは一応、メールアドレスの交換はしたが、たぶん、すぐには連絡はしないだろう。
帰るときに小野は言った。
「じゃあ、縁があったらまたね」
気に入った言葉だった。
友香にはまだ、誰かとつきあうなんて心の余裕がなかった。
でも、もう少し時間がたって、小野と再会することになったら、それは縁があったということ。
その時はもしかすると一歩前進できるかもしれない。
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