友香合コン

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友香は、井上と別れてから講義が終わると逃げるように家へ帰っていた。 そんな大学と家との往復だけで、周りがどんなことを話題にし、噂をしているか全く知らなかった。 薫からそのことを知って、驚愕することになる。 井上と別れる少し前、一年の男子が、ふざけておこなった美女コンテスト、女王、王女、姫というニックネームにふさわしい女の子を探していた。  その姫に、友香が選ばれていた。 勝手に顔写真がアップされていて、すぐに知れ渡った。 井上のことと、姫という派手なあだ名は他の女子大生たちの妬みを充分かうことになる。 その後すぐに井上と友香は別れたが、しばらくの間、悪女だったから井上に振られたという噂をたてられていた。  だから、秋から冬にかけて、かなりつらい大学生活を送っていた。  それでも十二月の声を聞く頃になると、周りの学生たちもそんな噂に係わっていられなくなったのだろう。  もうそんなことを忘れたかのように、気にされなくなっていた。  友香も、世間の視線暴力から解放されたころだった。  クリスマスイブの日だった。  友香は家にいて、のんびり夕食の支度の手伝いをしていた。  そんな時、同じ英語学部の友人、田中紗代子から電話があった。 「友香、お願い。こんなこと、頼めるの、友香しかいない。私の代りに行って欲しいのっ」  そう哀願されていた。  そう、クリスマスパーティ―へ参加する代役なのかと思っていた。  せっかく会費を払ったのだから、誰か代りに参加してくれる人を探していると。  そのパーティーの内容によっては、友香も楽しめるかもしれない。  楽しかったら、会費を紗代子に返してもいいと気軽に考えて、承知していた。 「ありがとっ、友香。これ、絶対に参加って頼まれていた合コンなの。五名づつ、同じ大学の生徒ばかりの集まり。じゃ、地図、送信する。本当にありがとう」  えっ、合コン? と思ったときにはもう、紗代子からの電話は切れていた。  合コンだとは思っていなかった。  ただのパーティーならと、引き受けたつもりだったのだ。  すぐに紗代子からメールが届いた。  そこには合コンが行われるパブの地図が描かれていた。 ≪ありがとう。クリスマスっぽいディナーが出るみたい。食べて帰ってきて。もしかすると、ものすごい出会いが待ってるかもしれないし≫  まだ、誰かと出会い、恋をするには心の傷が癒えてはいない。
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