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確かに今までも小野は時々そういう表情をすることはあった。
それが世間一般で言う、ボーとしているといわれる所以(ゆえん)だったのかもしれない。
しかし、友香は父と兄がそういう感じだったから、それに気づかなかったのかもしれない。
友香たちは台所でくすくす笑った。母までが苦笑していた。
「うちの和将さんとお義父さんは親子だからわかるけど、なぜ友香ちゃんの彼氏も同じなわけ?」
と沙織に言われた。
「さあ、今まで気が付かなかったけど、そこか惹かれる理由だったのかもしれない」
「そうかもしれないわね」
と母までが賛同していた。
母が香しいコーヒーを運んでいくと、男性軍はハッとするかのように我に返った。
今まで自分たちが笑われていたなどと夢にも思っていない表情だ。
友香は、小野を見て吹きだしていた。
「なんだよ」
と言われて、慌てて首を振った。
兄たちは今いる広島の土地が気に入り、市内に家を買うことに決めたと発表した。
たぶん、父と母も初めて聞くことだったらしい。
二人ともそう思っていたのか、驚くこともなく、「落ち着くことができそうでよかった」と言った。
しかし、友香は不満だった。
兄たちはいずれはこちらへ帰ってくると思っていた。
実家へ入らなくても、この近くに住むのだと思っていたのだ。
広島は遠い。
簡単に遊びに行けるという距離ではない。
友香は不満を顔に表していたのを兄が目ざとく見ていた。
「なんだ、友香は何か言いたそうだな」
皆が見る。
「そんなにいい所だとしても遠すぎるって思っただけ」
皆の視線が負担になり、目を背けていた。
思えば小さい頃から兄にまとわりついていた。
母のことは怖いと思っていたから、兄と一緒にいればその怖さから逃れられる、助けてくれる存在だと思っていた。
合気道も兄がやっていたから始めた。
兄に褒められるとうれしかった。
その兄が結婚してすぐに他県へ行ったときは寂しかった。
それでもいつかは友香の近くに戻ってきてくれると思っていたのだ。
「なんだ、ブラコン(ブラザーコンプレックス)か」
小野がぼそりと言った。
「えっ、違う。私はそんな・・・・・・ただ、」
「ただ?」
「身内には近くにいてもらいたいなって思っただけ。それだけよ」
そう、決してブラコンとかではないと自分に言い聞かせる。
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