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久しぶりに兄たちの顔を見て、彼らがもっと近くに住んでいれば、楽しいのにと実感していた。
小野が友香を庇うように言う。
「家族だから近くにいてほしいということはわかる。でも家族だから、その決心を受け入れて見守ってやることも大事だと思う。友香のご両親のように。友香の寂しいという気持ちも愛情だけどな」
沙織が広島で知り合った友人と共に、雑貨の店を始める計画をしていた。
それなら転勤族の兄も広島へ留まれるように上司に相談したら、承諾してもらえたのだ。
それを聞くと、兄たちが落ち着ける場所が見つかったのだ、喜ぶべきだろうと思いなおしていた。
「じゃ、広島へ遊びに行って、新しい家に泊めてもらう」
というと、兄夫婦も嬉しそうにうなづいていた。
友香もあと一年の学生生活を残すだけとなった。
教師になるつもりでいた。
これからはいろいろ忙しくなるだろう。
そして、小野も就職し、新たな生活が始まる。
自分だけが寂しいと言って、兄たちを束縛するようなことを考えるのは自分勝手だったと感じた。
父と母が、夕食の買出しに出かけた。
茂樹も連れていく。
手巻き寿司の新鮮な材料を買うと息巻いていた父が心配になり、母が一緒についていったのだ。
友香たちはリビングでくつろいでいた。
兄が小野に、営業の立場などを得々と語っていた。
まだどこに配属されるかわかっていないのに。
沙織がぐっと顔を近づけてきて、友香に意味ありげな目をむける。
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