友香の実家

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 友香から斜め向かいにいる兄を見ていた。  その隣に座っている小野の顔が同時に視界に入った。  その小野がしきりに何か訴えかけていた。  意識をそちらに向けた。  その口が、よせと言っている。  友香が兄に何か反論をしようとしているのを阻止しようとしていた。  そうだ、小野もここにいるのだ。  ここで兄妹喧嘩をしたら、小野の訪問が台無しになるし、気まずい雰囲気になることは間違いなかった。  友香は、兄に言おうとしていたことを飲み込んだ。  あらゆることで、兄を攻撃し、自分を正当化しようとしていたのだ。  兄は兄で、相変わらず怒った表情でいるが、心を落ち着けようと冷めかけたコーヒーに手をだしていた。  沙織が、友香の横でハラハラしているのがわかった。  兄はごくりと喉を鳴らしてコーヒーを飲むと、少々乱暴にマグカップをテーブルに戻した。  再び友香に目をむける。 「いいか、友香。父さんも母さんも、お前はもう一人前の大人とみてくれている。だから、何も言わないんだ。それならその期待に応えるような行動をすべきだろう」  期待ってなに? 父と母が認めてくれればそれでいいじゃない。  広島にいる兄にとやかく言われることではないといきり立つ。  どう反論しようと考えていると兄の顔の後ろに小野の顔が動いた。  小野の口が《はい》と動いた。  そう言えと言っていた。  それを認知していた友香だが、素直にそう、返事できないでいた。  今度は小野が厳しい表情で、再び《はい》と口を動かした。  兄を怒らせてもいいが、小野には幻滅されたくはない。  友香はしぶしぶ「はい」と言った。  兄はとたんにその表情を和らげた。
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