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聖歴2045年─── 美しき国ニポンは、何十年と守り続けた平均寿命世界第1位の座を、とうとう他国に譲り渡した。 憤慨したのは時の総理大臣、阿倍野三蔵である。 「いずれの分野においても。我が国が。2番手に甘んじてはならない。」 阿倍野総理はありとあらゆるメディアを通し、その独特な、淡々としてはいるが有無を言わさぬ語り口調で、全国民に呼びかけた。 国民の平均寿命が世界で1位ということは、ニポンが、 豊かな国であること 平和な国であること 高度な医療技術を持っていること 政治が安定していること これらを裏付ける証拠でもあったのだ。それが、自分が国のトップである今、覆されてしまった。そのことが阿倍野総理には耐えられなかった。 ────今の総理大臣は駄目だな。 ────所詮、親の七光りか。 いつしかそんな幻聴にさえ悩まされるようになっていた。
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