第1章

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やがて赤い電車がライトを灯して、下りホームに滑り込んできて定位置にゆっくり停車すると、扉をロックしていたエアの抜ける音がして、降車の客をたっぷり吐き出し、ホームは一気にごった返した。 それからそこにいた他の酔っぱらいたち、やたらうるさい若者たち、おびえた老人たち、残業でくたくたに疲れたサラリーマンたちなどとともに、悦はその車両の中に、自ら飲み込まれていった。 週末の最終の特急はほぼ満員。 当然座る席などは無く、電車内は窮屈で暑くて、ニンニクやアルコールの臭いが充満し、酒を飲みすぎていた悦はさらに気分が悪くなり、吊革につかまりながら、近年稀なほど飲みすぎたことを後悔していた。
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