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土井さんが不思議な顔で指差す。その方向は私が郵便受けから取り出したものに向いていた。それにつられて、手に持っていたそれを目線の位置まで持ち上げる。
「ひっ」
びっしりと文字が書き込まれた手紙。封筒には入っておらず、一枚だけの便箋だった。それを手放して少し後ろに飛び退く。
「どうしました?! 大丈夫?」
土井さんは私の異様な行動にすぐ駆け寄ってくる。
「すみません……なんでもないので」
「なんでもない事ないでしょ! どうしたんです」
こんなの打ち明けられない。恥ずかしい、怖い。嫌われるかもしれない。私は土井さんを押しのけるようにのろのろと手紙を持ち上げて、部屋に戻ろうとした。
「吉永さん! なんだかわからないけど困ったことがあったら言ってくださいね!」
「……はい、ありがとうございます」
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