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「ハル! ハル! 見つかったの!」
慌てて駆け寄った私を倒れないように抱きとめてくれたのは、いつにも増して優しいまなざしの私の彼氏。
「何が?」
冷静なハルの鼻先に「ジャーン!」という効果音と共に突き付けたのは、半年前に失くしたハルの家の合鍵だった。
「このタイミングで? すごいな。どこにあった?」
「それがね。なんと私のへその緒を入れた桐箱の中」
「それはまた……随分大事な物と一緒にしまっておいたんだね」
ちょっと呆れたようなハルの顔をムッとして睨んだ。
「滅多に開けない和箪笥の隠し引き出しの中の桐箱の中。私がどれだけハルの家の合鍵を大事に思っていたかわかるでしょ?」
「昨日、お母さんがへその緒をヒナに渡そうとして合鍵を見つけたんだろ? 気まずかっただろうね?」
「ちょっとね。でも、見つかって良かった。これで鍵を付け替えなくて済んだね」
「じゃあ、これは奥さん専用の鍵だから、もう絶対に失くさないように」
”奥さん”なんて言われてニヤけてしまう。
「あー、ハネムーンに持って行くのは怖いから、どこかにしまっておこう」
そう言った私の手からスルッと鍵が抜き取られた。
「これは俺が預かっておく」
「えー、いくら私だって同じ失敗は繰り返さないよ」
そうは言ったものの、ジトッとハルに見られたら自信がなくなってきた。
「お願いします」
ハルに頭を下げると、ハハッと笑われた。
「これは俺の鍵と一緒にしておく。ほら、俺たちみたいだろ?」
1つのキーリングに通されて仲良く並んだ2本の鍵をハルが手の平に乗せた。
「ハネムーンから帰って別々にするのがかわいそうになっちゃう」
「じゃあ、家に帰ったら同じフックに掛けることにしよう。そうすればこいつらも夜は一緒だよ」
その言葉にカーッと顔が熱くなった。
「ヒナ、今夜が待ち遠しい」
「言わないで。緊張しちゃうから」
これから始まるチャペルの結婚式も披露宴も、今夜のことを考えたら大したことない。
なんたって、初夜ですから!
「俺の方が緊張する。いろいろと」
「そうなの? でも、期待しないでね。ガッカリさせちゃうと思うから」
「ガッカリするわけない。ヒナだから欲しいんだ」
ますます赤くなった私をハルは愛しそうな目で見つめてくれた。
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