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そう、今時珍しいかもしれないけど、私たちは今日初めて結ばれる。
合鍵を渡したときは、ハルも私を抱く気だったみたいだけど、私に心変わりされたと誤解して考えを改めたそうだ。
結婚するまで待つと。
そのかわり、あの後すぐに婚約指輪を買いにいったハルは3日後にはプロポーズしてくれた。
そして、憧れのチャペルの最短の日取りを押さえて、めでたく結婚式を迎えることとなったわけ。
「あのときは本当にハルに嫌われるって思って必死に探したんだから」
「はいはい」
「お姉ちゃんの部屋に忍び込んで探し回って、全部元通りにしたと思ったのにバレて、3か月口きいてもらえなかったし」
「結婚の挨拶に行っても一言も口きかないから、無口なお姉さんだと思ったけど」
「口から先に生まれたようなおしゃべりだよ、あいつは。とにかく、あちこち探したのに、なんでへその緒を見なかったんだろうな」
「もう黙って。緊張しておしゃべりになるのはわかるけど、いい加減キスさせて」
タキシードのハルはいつもの10倍はカッコ良くて、そっと唇を合わせただけでフワフワと浮かんでしまいそうになる。
「ハル? やっぱりハネムーンから帰ってからにしない? 初めてって凄く痛いって言うし、血がドバっと出たら旅行に差し支えるんじゃない?」
この期に及んで、私はどこまでも逃げ腰で。
優しいハルのことだから、「そうだね。そうしようか」って言ってくれそうな気がした。
「どんな拷問だよ? ヒナ、俺がこの半年どれだけ我慢したかわかってる? おまえは無意識に煽る小悪魔だし。もう限界だから逃がさないよ」
「うっ、ダメ? ちょっと、ていうか、かなり怖いんだけど」
「大丈夫、ゆっくり優しくするから。ヒナは俺と1つになりたくない?」
ストンとカクテルドレスを脱がされて、下着姿を晒したまま首を振った。
「なりたい」
「愛してるから、ヒナのすべてが知りたい。力抜いて。大丈夫だから」
目を閉じる寸前、薄暗い照明の中、ハルの鍵と私の鍵がテーブルの上でキラリと光った。
私は大事な物をなくしてしまったと思って随分焦ったけど、あの合鍵をなくさなかったら今頃まだ私たちは結婚話も出ていなかったかもしれない。
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