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「でも! すごいミルフィーユでしょ? ゴマのミルフィーユ」
「……うん。ゴマが香ばしくておいしいよ」
「良かったぁ。あ、あとねブロッコリーのからし和えも私が作ったの」
そう言うと、ハルは「どれ」とすぐにブロッコリーを食べてくれた。
「あ、旨い」
「でしょでしょ? ごま油が隠し味なんだ。でね、ミニトマトも私が詰めた」
苦笑しながらもハルはミニトマトを口に入れてくれる。
母が作ったおかずは後回し。
そんなハルが大好きだと思った。
なのに私はハルからもらった大事な物をなくして、嘘に嘘を重ねている。
ハルとの時間を幸せだと思えば思うほど、申し訳ない気持ちが大きくなっていった。
「ヒナは俺と一緒にいて幸せ?」
ハルがそんなことを聞いてきたのは、お弁当を食べ終わって2人並んでゴロンと横になったときだった。
仰向けに寝た私の方に体を向けて、肘枕をしたハルがじっと見つめている。
「どうしたの? 急に?」
突然2人の体勢に恥ずかしさを覚えた。ハルと並んで寝たことなんてない。というか、ハルの前で体を横たえたことすらない。
「俺はヒナと27日間も会えなくて辛かった。もうヒナ不足で限界だった」
思い出したように苦しい顔をしたハルに、また罪悪感を感じた。
「私もハル不足だったよ。ゴメンね、私のせいで」
「なんだか今日のヒナはそんな顔ばっかりだ。俺といてもつまらない?」
「そんなことない! ハルと一緒にいられて嬉しいよ。なんだろ、やっぱりちょっと疲れてるのかな」
「じゃあ、ちょっと寝ようか。首、上げて」
少し照れたようにそう言うと、ハルはぎこちない動作で腕枕をして私を抱き寄せた。
「ハル、ドキドキして眠れない」
キスは何度もしたけど、こんな風に体をくっつけたことなんてなかった。
「うん。でも……ずっとこうしたかった」
切ない声で囁いたハルの心臓の音はものすごく速かった。
遠くから子どもの笑い声が聞こえて、ハルも私もパッと離れた。
周りには誰も見えないけどやっぱりここは屋外で、こんなイチャイチャするような場所じゃない。
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