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「今月もまた大文字先生のポイントがゼロなんですけど……」 困りきって報告にきたのは大文字の1学年先輩にあたる皆方(みなかた)医師である。腕もよく穏和で優しい皆方は、患者だけでなく同僚や教授たちからの信頼も厚い。医者同士のくだらない揉め事があると必ず呼び出され仲裁に当たらされた。あだ名は“ガンジー”である。 皆方の報告に、藍膳は深々とため息をついた。 「確か先月は、カードをなくして再発行してもらわなかった、とか言い訳していたな……。一体どういうつもりなんだ、大文字くんは」 どういうつもりかと問われても皆方に答える術はない。 そもそも大文字という男は学生の頃から変わっていた。テレビに出て妙なダンスを披露したり、講堂の裏にある廃墟のような建物のなかでヤギを飼育したり、遺伝子を組み換えて新種の花を育てたり。医学部に来たというのに、この男は一体何がしたいのだろうと、大文字を知る誰もが一度は頭を捻っていた。
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