10人が本棚に入れています
本棚に追加
禍尾巣大学附属病院の職員食堂は「早い、安い、うまい」の3拍子が揃っている。種類もまあまあ豊富で、毎日食べてもそれほど飽きない。
午後2時を過ぎ、人がまばらになった食堂の真ん中のテーブルに大文字はいた。煮魚定食を食べ終え、空になった食器を横にずらして、何やら難しい表情でノートに書き物をしている。
大文字と向かい合って座る古東医師が「昔ながらのナポリタン(大盛)」を旨そうに食べていた。グリンピースだけ器用に皿の端によけている。
「大文字先生」
口のまわりをケチャップだらけにした古東がふと話しかけた。大文字は古東の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、ノートに目線を落としたままである。
「食後にあまり難しいことを考えると、消化によくないよ」
最初のコメントを投稿しよう!