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禍尾巣大学附属病院の職員食堂は「早い、安い、うまい」の3拍子が揃っている。種類もまあまあ豊富で、毎日食べてもそれほど飽きない。 午後2時を過ぎ、人がまばらになった食堂の真ん中のテーブルに大文字はいた。煮魚定食を食べ終え、空になった食器を横にずらして、何やら難しい表情でノートに書き物をしている。 大文字と向かい合って座る古東医師が「昔ながらのナポリタン(大盛)」を旨そうに食べていた。グリンピースだけ器用に皿の端によけている。 「大文字先生」 口のまわりをケチャップだらけにした古東がふと話しかけた。大文字は古東の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、ノートに目線を落としたままである。 「食後にあまり難しいことを考えると、消化によくないよ」
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