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さらさらと素早いペン運びで、解読不能な暗号のような文字でノート1ページ分を埋め尽くすと、今度はペン先でノートをとんとんつつき始めた。 「なあ、古東先生」 きりりとした眉の間に深い皺を刻んだまま、自分の書いたものを睨みつつ大文字が呼び掛けた。麺の奥に潜んでいたグリンピースをフォークでロックオンしていた古東が顔を上げる。 「タイムパラドックスについてきみはどう考える?」 「……はあ?」 「たとえば、未来の私が現在に来たとする。“私”という存在はふたりになってしまうが、未来の“私”は過去にそのようなことがあったと記憶しているのだろうか。それとも“私”が過去に戻った時点で未来は変わっているのだろうか。逆に今の“私”が未来に行ったとする。未来の“私”は過去に自分が未来へ行ったことを“覚えている”のだろうか。あるいは誰かの仮説のとおり、時間軸には“別次元”が存在するのだろうか」
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