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「この国は超高齢社会であるという現実を教授はお忘れか?」 大文字はひどくゆっくりした動作で腕を組んだ。 「フォーリーカテーテルや気切、ペグなどで命を繋いだ患者が退院したら、それらを管理するのは家族だ。麻痺が残った患者をサポートし、車に乗せて通院するのも家族。食事、排泄、清潔保持、健康管理、生活のすべてを家族が行うのだ。そしてそれを一番申し訳なく思うのは患者本人だ。 訪問看護や訪問ヘルパーの制度は充分と言えるか? 毎日来てもらうには介護保険だけでは足りない、実費になる。介護施設への入所希望者は年々膨れ上がるばかりだ。退院後の生活基盤を整えるまでが病院側の責務ではないのでしょうか」 「病院だってね、経営していかねば潰れてしまうのだよ! 理想ばかり論じていては経営が破綻してしまう」 「ならば、ポイント制度などというくだらないことをやっていないで、正確な診断と適切な治療法を選択する能力や、患者の身体にできうる限り負担をかけず治療を行う能力を徹底的に指導し、合併症や医療ミス防止の教育訓練、回復に向けたリハの充足、きちんとした退院支援すなわち、受け入れ施設や在宅看護・介護部門との連携など、入院日数を減らす為に“病院側”がやるべきことはいくらでもある筈だ」
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