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椅子を軋ませて、藍膳は窓のほうに体を向けた。15階建ての立派な外観、広い駐車場、紅葉の美しい並木路が、窓の外に広がっている。 これが私の理想としていたことか? 大きな病院で、白衣を翻して廊下を闊歩することが? 誰もが一目置く地位につくことが? 「皆方先生……」 「は、はいっ」 突然呼ばれて、皆方は慌てて立ち上がった。 「皆方先生も、大文字先生の考えと同じかね?」 「あっ……」 皆方は動揺を隠しきれず、意味もなく白衣のボタンを指先で弄った。藍膳教授には特に目をかけてもらい、片腕とまではいかないまでも片指くらいの働きはさせてもらってきたのだ。 だが……。
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