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「私は……患者さんと家族が、笑顔で退院できることが、一番いいのではないかと……」
「ふむ」
藍膳は、窓の外に目を向けたまま、暫し黙りこんだ。
医者としての理想と、現実。医療費削減ばかりを考える国政。止まらない少子化。ニポンはこれからどうなってしまうのだろう。楽観的に考えてみようとしても、どうしても楽観的になどなれない。
どうせ先が見えないのなら。
大文字たちであれば、もしかしたら。
キィ、と椅子が軋み、藍膳は再び大文字に向かい合った。
「私の制度に従わないというのなら、今ここで辞表を提出したまえ」
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