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古東と皆方が同時に息をのむのが聞こえた。 大文字は表情ひとつ変えず、白衣の胸ポケットからボールペンを抜き取った。 「ここで積み上げたキャリアも地位も何もかも失うことになるが、それでも構わないね?」  ────外の世界に飛び出してゆけ。 「構いません」  ────その目で現実をしっかり見るのだ。 「そうか、残念だよ」  ────おまえの理想とする医療を実現させてこい。 「お世話になりました」  ────おまえならできる筈だ、その腕と、揺るぎない信念と、内に秘めた情熱があればな! そしていつか、私に見せてくれ……患者やその家族にとって、最善の道というものを。 ◇◇◇
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