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藍膳教授の提案したポイント制度は徐々に効果を表し、入院患者はどんどん退院してゆき、空いたベッドはすぐに新しい患者で埋まっていった。ベッドの稼働数が良いと病院も潤う。職員にはこれまでにない額のボーナスが支給された。 街には継続医療を必要とする人々が溢れた。訪問看護も訪問介護もすべてのニーズに対応できるまでの余力はなく、かといって療養型の施設も足りておらず、その待機者は、禍尾巣大学附属病院近辺だけでも4万人を超えている。 結局は、退院しても病状が落ち着かず、また再入院するといったケースが増え、入院患者の顔触れにはあまり変化がない。誠に馬鹿らしい話であるが「一度退院した」という事実が、ベッドの稼働数を数える上で重要なのである。 リピーターの入退院に追われる一方、もちろん新たな患者も増える。最初はポイント稼ぎに一生懸命だった医師たちも、あまりの多忙さに目を回していた。 もちろん医師だけでなく看護師や検査技師、リハビリスタッフ、医事課の職員も、退職していく者が後をたたなくなった。
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