ある神官の一日

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────カラン、カラン!カラン、カラン! ヴァール神殿に、鐘の音が大きく響き渡った。 「では、今日の講義はここまで」 「「「ありがとうございました!」」」 私が講義の終了を告げると、修練生達は一斉に退出して行った。 皆、昼課の席取りのため、一目散に地上区域3の郭の食堂に向かったのだ。 幸いなことに、今日は質問をしてくる者はいないようだ。 (やれやれ、やっと午前課の『労働』が終わった) 久々にゆっくり昼食にありつけそうだ。そう思い、私は安堵した。 講義の資料を手早くまとめ、ここ地上3階にある学び舎の中心部へと急ぐ。 目指すは、地下1階層2の郭、高位神官用の大食堂だ。 地下への転移陣がある『扉の間』まで行くには、吹き抜けとなった中心部を突っ切るのが、手っ取り早い。 私は柱の間に立ち、1階まで見下ろした。 添えた腕に嵌まった腕輪が、円蓋から降り注ぐ陽光を反射し、金色に輝いている。 (よし、今なら人も少ない) 確認してバサリと翼を広げると、吹き抜けの空間へと飛び降りる。 金色の輝きは、たなびくように煌めいていた。
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