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◇
「今日は早かったじゃないか」
南の大食堂で昼食にありついたところへ、疲れた様子の同僚が声をかけて来た。
手に抱えた大きな素焼きの器には、たっぷりと粥が盛り付けられている。
同僚の午前課のお役目は、『祈り』の方だったらしい。
『祈り』を行なう高位神官の数も減っており、一人辺りの負担が、昔と比べて増えているのが現状だ。
「ああ。質問攻めにするお方が、いなくなったからな」
「メーガスか」
「おい、もうメーガス“様”だろ」
「おっと。つい癖が抜けなくてな」
「全く、これだからお前は」
「まあ、固いこと言うなよ。あいつなら気にしないって」
そう言って、同僚は大きく口を開けて粥を頬張った。
「やっぱり魚介の粥は、うまいな」
「だからと言って、盛り付けすぎだ。肥えると感覚が鈍るぞ」
「俺は『祈り』の後で、腹減ってんだよ」
「体が軽い方が感覚が冴えて、午後課のお役目もはかどる」
「お前は毎度ながら控え目だよなー。たまには良いじゃないか。いつもの穀物粥には飽き飽きしてたんだ。これも、『愛し子』様さまだな」
「それには私も同意だな」
『神の愛し子』様であるカナタ様が出現してから、神殿への供物が急激に増加した。
そのお陰で、供物の受付を行なう北の神託所は大忙しだが、神官達の食生活は大いに向上していた。
大多数の神官は、必要以上に食べることを嫌う。
体の感覚が鈍ると、力の発揮にも影響が出るからだ。
その変わり、少量でも満足できるよう、味付けには色々と工夫が凝らされていた。
なかでも魚介の煮込み粥は人気なのだが、主に運搬上と保存上の理由から、山の中腹にあるこの神殿では、あまりお目にかかれない一品だった。
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