ある神官の一日

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「じゃあ、私は先に行く」 「おい、午前中の報告は良いのか?」 「ああ。今日は午後から北の神託所なんだ。もう報告は済ませてある」 わざわざ2の郭の大食堂まで戻るのは、この食後の報告会があるからだった。 しかし、神域の外にある神託所へ行く時は別だ。 距離があるため、早めに行かなければ、午後課の『労働』開始時刻に間に合わない。 「午前も午後も『労働』かよ。羨ましい奴」 「何言ってるんだ。北の神託所だから、午前も『労働』なんだろ。最近は経験のある神官が少なくなって、疲れるんだ。むしろ、変わってもらいたいよ」 「あー、そういやそうだったな。いや、遠慮しとくわ。俺は、人に教えたり、ちまちました力の調整は苦手なんだ。まだ、『祈り』で力を放出してる方がましだ」 神託所での高位神官の主な『労働』は、下位神官達の指導や補助だ。 そして、“北”というと、『神門』の横にある神託所を指し、主な仕事は“治療”──民の瘴気を祓うことである。 瘴気を祓うこと自体が、民の魔力量や侵された状態などに応じて、適切な力を行使する必要があり、神経を使う仕事だ。 基本的に対応するのは下位神官達だが、最近は人手不足で、一人で対応を任せられる者が少なくなっていた。 圧倒的に経験不足の者が多いが、実地をこなさければ、適切な判断や対応はいつまでたっても行えない。 そのため、未熟な下位神官の対応に追われ、高位神官の負担は必然的に大きくなっていた。
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